初恋はカフェ・ラテ色
「本当に……? 本当に私が好き?」

そう聞いた途端、堰を切ったように涙が止まらなくなる。

洋輔さんはつらそうな顔を一瞬見せると、私の後頭部に手をやり抱き寄せた。

「よ、汚れちゃうよ」

洋輔さんの胸から離れようとすると、大きな手でゆっくり髪を撫でられて胸の中に留まる。
 
幸いマスカラはつけていないけれど、食事後にメイクを直して唇にグロスを塗っていた。

「かまわない。心春、長い間君の気持ちに応えてあげられなくてごめん」

そのとき、突然雨がザーッと落ちてきた。

「話はあとだ。ホテルに戻ろう」

洋輔さんはジャケットを脱いで私の頭にかけると、手を引き来た道を戻る。

雨に濡れていく背中を見ながら、自分に問いかけていた。

洋輔さんが私を好き。夢じゃないんだよね……?

こんな状態なのに、お花畑にいるように気分が浮かれていた。

そんな中、雷まで激しくなりはじめ、ホテルに着く頃にはびしょ濡れになってしまっていた。

他のお客さんたちも突然の雨にびっしょりだ。

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