初恋はカフェ・ラテ色
「まいったな……」

洋輔さんはロビーをぐるっと見てから、私に待つように言ってフロントに近づいた。

それからロビー横にあるブティックに入って行く。

洋輔さんの行動を目で追いつつ、ようやくびしょ濡れの自分に気づいた。

困ったこの状態を考えていると、洋輔さんが紙袋を持って戻ってきた。

「部屋を借りたから濡れた服を着替えよう」

紙袋を軽く掲げて見せる。

「Tシャツとショートパンツを買ってきたから」
「着替えるって、どこで……?」
「部屋を取ったよ」

へ、部屋っ!?

唖然となっていると、洋輔さんは困ったように笑う。

「なにもしないから」

洋輔さんがそう言うのならそうなのだろう。

ホテルの部屋にふたりきりなのに、なにもしないからとは、未経験の私でもちょっとショックだ。

「着替えないと風邪ひいちゃいますね」

そう言って、洋輔さんの隣に並んだ。
 
廊下の絨毯が濡れてしまうのを気にしつつ、エレベーターで3階まで行き部屋へ入る。


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