初恋はカフェ・ラテ色
「先にシャワーを浴びてくるんだ。唇が青い」

濡れてからホテルの空調で身体が冷えてしまったようだ。

でも、それは洋輔さんもそう感じたようで、真っ先に空調設備を調整している。

「洋輔さんも寒いでしょう?」

聞いてみると、洋輔さんはモニターから目を離す。

「無意識に誘惑しないでくれないといいんだが」
「えっ?」
「俺も一緒に入っていいの?」

そろりと近づき私の方に少しかがむと、悪戯っぽい目で見つめられる。

「そ、それはダメですっ!」

慌てて言うと、洋輔さんは声を出して楽しそうに笑う。

「じゃあこれだけにしておくよ」

言葉の意味がわかったのは、洋輔さんの唇が私の唇から離れたあと。

「リンゴみたいに真っ赤だ」
「なにもしないって……」
「そう言うオトコに付いてきたらダメだよ。早く入ってきて」

着替えの入った紙袋を手に持たされて、軽く背中を押された。

そう言うオトコに付いてきちゃダメって……。

バスルームに続く洗面所のドアを閉めて、唇に指先をやる。

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