初恋はカフェ・ラテ色
「心春……」

洋輔さんは今まで膝の上に置いていた手を私の髪に置き、ゆっくり撫でてくれる。男の人の指らしく節張っているけれど長くてキレイな手で、触れられるたびにドキドキと胸をときめかしてくれる。

「でも、どうして好きだって言ってくれなかったの?」

私の髪を撫でてくれていた手がピクッとして止まる。

「ん……それは事情があってね……」

残念そうな色を見せる瞳。

「事情……?」
「ああ。今は話せない事情がね」
「……よくわからないけれど、言えないことならもう聞かない……」
「ありがとう」

その事情とやらを知りたい気持ちはあったけれど、優しいけれど頑固なところもある洋輔さんは絶対に教えてくれないはず。

「あ、あと……洋輔さん、春に女の人から飲みに行きませんかって誘われたの覚えている?」

洋輔さんは少し考えるそぶりをして首を軽く横に振る。

「覚えていないな」
「その人、うちの先生だったの。誘ったら彼女がいるからって断られたって」
「ああ……それはお客様の誘いを断る手だよ」

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