初恋はカフェ・ラテ色
赤い窓枠のガラス向こうに、カウンターの中で機敏に動く洋輔さんが見えた。

ほんと、カッコいい。

白いワイシャツ、腰からの黒いロングエプロン、注文を受けた時に爽やかな笑顔。

22歳から8年経った今もあのときと変わらない少年ぽさがある。

洋輔さんも今年で30歳かぁ……いつ結婚してもおかしくない年だよね……。

ふとそんなことを考えてしまうと、胸がざわめき始める。

この8年間、本人からははっきり聞けなかったけれど、恋人がいるとカフェのスタッフが話しているのを聞いたことがある。

あれほどのルックスなのに恋人がいないわけないが、実際恋人の存在は全く見えなかった。
 
私は過去に1度だけ洋輔さんに告白したことがある。

高校の卒業式の日だった。

その日、カフェに寄ると洋輔さんはカスミソウがたっぷり入ったステキな花束と可愛いピンク色の万年筆を用意してくれていた。

どうしても想いを伝えたくなって「好きです!」と言ってしまったけれど、洋輔さんは少し困ったような顔になって、「心春はまだ子供だから。大人になって、まだ俺を好きだったら考えよう」と断られた。


< 14 / 263 >

この作品をシェア

pagetop