初恋はカフェ・ラテ色

思いつき

しばらくするとロングエプロンを外し、手に紙袋を持った洋輔さんが側に立った。

「心春、マンションで休憩するからおいで」

洋輔さんからのプレゼントの腕時計を見ると、13時30分。

「それは……」

見覚えのある腕時計に洋輔さんの顔がほころぶ。

「ようやく身につけることができたから。これも……」

喉元のところに一粒のダイヤモンドが揺れている。これを身につけると、急に大人になったような重みを感じる。

「つけてくれて嬉しいよ。良く似合う」

テーブルの上のスケッチブックや色鉛筆をしまい立ち上がると、腰に手を置かれそっと出口まで誘導される。

「あっ、お会計を――」
「いいから」

強引に店から出されて、じりっと暑い太陽の下、洋輔さんのマンションへ向かった。

マンションにふたりきり……。

ただ休憩をしに行くわけだから、何も起こるわけがないけれど、マンションへ向かう私の胸はドキドキと高鳴っている。

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