初恋はカフェ・ラテ色
数日後、仕事帰りに『グラン・カフェ・ロッソ』に来ていた。
いつものようにカウンターの中から笑顔で出迎えてくれる。

「おつかれ」
「洋輔さんもお疲れ様です」

ふたりの間に漂う空気感に遠慮したのか、洋輔さんの隣にいた進藤さんが離れていく。

「進藤さんと話していたんだよね? いいの?」
「ん? ああ。ちょっとドルチェのことを話していたんだ。そうだ、心春食べてみてくれる?」

洋輔さんはそう言いドルチェの入っているガラスケースからレモンケーキとティラミスを運んできた。

「これ食べてみてくれないかい?」
「ふたつも?」
「一口味見だけでもいいんだけど。感想を聞かせて」
「う、うん」

まずは表面が黄色のゼリーに覆われたプルンとしたレモンケーキにフォークを入れて一口食べてみる。

あれ……? ちょっとパサパサし過ぎてる気が……。

ゼリーの後に口の中に残るスポンジケーキ。

あまりおいしくない……。

洋輔さんは私が食べるのを涼しげな眼差しで見ている。

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