初恋はカフェ・ラテ色
大人になって、まだ俺を好きだったら考えよう……それは私を傷つけないための言葉だと分かっていた。
 
それから4年経った今、まだ私は大人になれた気がしないし、告白する勇気もなかった。

カフェのスタッフに言うには、私は全身から洋輔さんが好き好きオーラが出ていると言われているけれど。
 
洋輔さんにまた告白してフラれたら私の人生は終わったようなもの。

誰かを好きになるなんて考えられないから、一生独身でいようとまで思うこともしばしばある。

洋輔さんが結婚するとき、絶望的な気持ちになるんだろうな……。

カフェに来る女性客はたいていが洋輔さん目当てで、プレゼントを渡される場面に出くわすこともあるけれど、私と同様、丁寧に断り嫌な雰囲気を残さない。

だからまたその女性客はカフェに通ってくる。

「柴田、さっきからなにぼーっと突っ立ってるんだよ? はいらねーのかよ」

ちょっと乱暴な言葉が物思いにふける私の思考に入ってきた。

赤い木枠のドアを開けて顔を覗かせて今井太一(イマイ タイチ)が見ていた。

彼は高校の時の同級生。

モデルにもなれそうな太一が最近カフェで働き始めてさらに新顔の女の子が通い始めている。

高校の時は不良グループで世間をなめていた太一が、今は爽やか系に変貌していた。

168センチと、ちょっと背が低いけれど人気上昇中。

背が伸びなかったのは教師に隠れてこっそり吸っていたタバコのせいだと、私はひそかに思っている。

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