初恋はカフェ・ラテ色
「熱は?」

洋輔さんは話を変え、持っていた差し入れを渡す。

「ありがとうございます。下がり始めたんでもう大丈夫です。お腹空いていたんで嬉しいです。何もなくて」
「しっかり食べるように」
「食べ物にありつけるのも私のおかげだからねっ」
「はいはい。サンキュウな。オーナー、ありがとうございました」

太一は嬉しそうに差し入れを見てから、洋輔さんに頭を下げた。

マンションを出ると、店に向かって歩き出す。手は自然と恋人つなぎ。

おしゃべりをしながら幸せオーラが全開でいると、前から来る男性に私の足が止まる。その様子に洋輔さんも足を止めた。

「順平さん!」
「心春ちゃん!」

偶然の出会いに順平さんも驚いたよう。

順平さんの視線が私から洋輔さん、そしてしっかりとつないだ手に移動していく。

なんか変な空気が漂っているように感じるのは私だけ?

「よ、洋輔さん、知ってるよね? お父さんの弟子の順平さん」
「ああ。名前だけは聞いていたからね。松下洋輔です」

洋輔さんが堂々と自己紹介すると、順平さんも名前を名乗る。

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