初恋はカフェ・ラテ色
明日『カフェ・グラン・ロッソ』に行ったら、友達の手作りをもらったからと洋輔さんに言って一緒に食べよう。

初めてにしては上々の出来栄えだし。


翌日、出かける準備をして居間に行くとお母さんが見当たらない。

「お店に出ているのかな」

居間の隣に4畳半ほどの部屋があり、その先が店舗になっている。店舗の横は工場(コウバ)だ。

4畳半の部屋は従業員さんの休憩所や着替える場所になっている。

お店へと行ってみると、依子さんしかいない。土間に降りて依子さんに近づく。

「依子さん、こんにちは。お母さんは?」

工場にいるお父さんに気づかれないように姿勢を低く小声で聞く。

「あら、心春ちゃん。こんにちは。女将さんはちょっと用事があるとかで出かけたのよ。すぐ戻るって言ってたけど」

依子さんは我が家の内情をよく知っているので、私と同じように小声で話してくれた。

「何の用事だろう……」

ま、いっか。

「ありがとうございます。出かけてくると言っておいてください」
「はい。いってらっしゃい」

お父さんに見られないようこそこそと居間に戻り、玄関に向かう。昨日焼いたケーキも忘れずに持った。

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