初恋はカフェ・ラテ色
お店に出るとお母さんは魚屋のおばあさんの接客中だった。依子さんも若いママさんを相手にしている。

店内はクーラーが効いているけれど、外から入ってきたお客様は汗がひかないようでハンカチで拭っていた。

私は急いで紙コップに冷たい麦茶を注ぐと、お客様のところへ持っていく。

「あら、心春ちゃん、ちょうど良かったわ。先日のうちの嫁が話したお見合いの件なんだけどねぇ」

魚屋のおばあさんは私の顔を見てしわのある顔をにっこりさせた。

「おばあさん、あれは断った――」

私の口を挟ませずにおばあさんは話しだす。私はお母さんと顔を見合した。

「それがさぁ、心春ちゃんをえらく気に入っちゃってね~ ぜひ会って話をしたいと言うのよ。銀座の老舗のお寿司屋さんのひとり息子だよ。結婚したら玉の輿よー!」

おばあさんの勢いにタジタジだ。

「いい男なのよ~ 会ってみたら?」

そんな話を持ってこられても私には洋輔さんと結婚したいんだから、最初から断るのに会うなんて時間がもったいない。

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