初恋はカフェ・ラテ色
お父さんは私をまだ無視してせかせかと手を動かしている。

少し丸まった背中、やや痩せ気味で頼りなげに見えてしまう。髪の毛は白髪が目立ってきている。染めてみればと言っても、あんなものに頼ったら男じゃないとか……。

お父さんは大きくて強いものだと思っていた。でも、今の後姿を見るといつの間にか年をとったのだと認識する。

「お父さん、こっちを向いて! ちゃんと話してくれないとわからないよ」

「おやっさん、俺出ていましょうか?」

不穏な空気に居られなくなった順平さんがおそるおそる声をかけた。

「いや、おめえもいてくれ」

順平さんにいるように言ったお父さんはようやく私と向き直った。眉間に深い皺を寄せている。

工場の入口におろおろしているお母さんの姿が見えた。

「順平、心春をもらってくれねえか」
「お父さんっ!」
「あなた!」
「おやっさんっ!」

お父さんを除く私たちの驚きの声が同時に発せられた。



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