初恋はカフェ・ラテ色
「おやっさん、なにをいきなり……」

順平さんは面食らった顔でお父さんを見つめた。

「ずっとお前たちが一緒になったらいいって思ってたんだ」
「お父さんっ! 勝手なこと言わないで!」

私が愛しているのは洋輔さんなんだからっ。

「心春、俺は玉の輿なんざ関係ねえ。食っていかれるだけの稼ぎで幸せになれるってもんだ。順平と結婚すれば3代続いた『柴田屋』も安泰だしな」
「じゅ、順平さんっ、お父さんに勝手なこと言われてるんだよ? なんか言い返してよ」

私ひとりではお父さんの考えを覆すことなんてできない。順平さんに助けてもらおうとした。
だけど、順平さんの口から出た言葉は思いもよらぬものだった。

「……心春ちゃん、俺は君と結婚したい」

驚き過ぎて金魚のように口をパクパクするだけで声が出ない。

だめっ! ここできっぱい言わないとっ!

「私には結婚したい人がいるのっ! 順平さんとは結婚なんて考えられない。愛していないもの!」

怒りで目の前がくらくらする眩暈と戦いながら、はっきりきっぱり言った。


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