初恋はカフェ・ラテ色
立ち止まりバッグの中から鏡を取り出して顔を映すと、不機嫌そうな可愛くない顔があった。

こんな顔で洋輔さんに会ったら心配されちゃう……。

洋輔さんに会いたくて勢いで家を出てきたけれど、この気持ちのままでは良くない。

改札を抜けてカフェとは反対の勤める幼稚園の方に足が向かっていた。

幼稚園までとぼとぼ歩き、Uターンしてもまだ気持ちはいつものようには戻らなくて泣きそうになっていた。

洋輔さんに会えない。家には帰りたくない。じゃあどこに行けばいいの?

「心春先生?」

肩を落として歩く私の背中に女性の声が呼び止めた。振り返ると里佳子先生が立っていた。
私の顔を不思議そうに見ている。

「里佳子先生……」
「日曜日なのにどうしたの?」

里佳子先生は両手に紙袋を持っている。

「あ、ちょっとブラブラと……」
「ちょっとブラブラ? その割には今にも泣きそうな顔をしているけれど?」
「そ……それは……」

里佳子先生の優しい微笑みに胸が熱くなって、口を開いたら涙がポロッと頬を伝わった。

< 192 / 263 >

この作品をシェア

pagetop