初恋はカフェ・ラテ色
お父さんのせいだよ。

お父さんを思い出し、無意識に頬を膨らませると、洋輔さんが話しかけてきた。

「心春、疲れただろう?」
「え? ううん。そんなことないよ」

軽く受け流そうとすると、洋輔さんはなにもかもお見通しのような顔をする。
するとエプロンのポケットからなにかを取り出して私の手のひらに置いて握らせた。

「?」

閉じた手を開いてみると、目をぱちくりと何度も瞬きさせてしまう。

「これ……」
「部屋に行って休んでいるといい。俺も小一時間で上がるから」

洋輔さんの部屋のカギ……。

「入って……待っててもいいの? 見られたくないものとかない?」
「くすっ。気になるのはそこ?」
「だって……」

部屋のカギが嬉しくて、顔がにやけてしまう。

「心春に見られても大丈夫だよ。ソファで横になっているといい」
「じゃあ! ご飯作ってもいい?」
「疲れてるんじゃないか?」
「ううん。お米はある? 調味料とかは?」

< 198 / 263 >

この作品をシェア

pagetop