初恋はカフェ・ラテ色
「心春ちゃんは、おやっさんの今までの苦労に報おうなんて気持ちは全然ないの?」

順平さんは痛いところを突いてくる。
出来ることなら親孝行をして老後は楽をさせてあげたい。

私が洋輔さんと結婚すれば『柴田屋』はいずれなくなる……。

想いを言葉に出来ないでいると、順平さんは更に続ける。

「俺が後を継げば、おやっさんの老後は楽できるんだよ?」
「……『柴田屋』の味は順平さんがいるでしょう? お父さんのためを思っても愛していない人となんて結婚出来ません。私は洋輔さんを愛しているんです」

やけに喉が渇き、目の前のアイスレモンティーをゴクゴクと飲む。

「プロポーズされた? されたとしてもおやっさんが許すはずないよ」
「……もう私は23歳です。親の承諾がなくても結婚出来ますから」

順平さんの顔に悲しげな表情が浮かぶ。

それはお父さんの表情と重なって見えた。

「心春ちゃんは、そんな身勝手な子だったの?」
「出来れば祝福して欲しいけれど、それがだめなら……仕方ないです……」
「心春ちゃん……」

順平さんから重いため息が聞こえた。

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