初恋はカフェ・ラテ色
「ぜ……絶対に順平さんと結婚は出来ませんから」

言いきると立ち上がって頭を深く下げる。そしてそのままファミレスを出た。



心の整理がつかないまま『カフェ・グラン・ロッソ』のドアを開けてしまってから、我に返る。

「いらっしゃいませー、あ! 心春ちゃん」
「こ、こんばんは。奈々さん」

私、ひどい顔していない?

「オーナーが落ち着かなげに待っていたわよ」
「え……?」
「ドアが開くたびに見ていたから。ほら、待ってるわよ」

カウンターの中にいる洋輔さんを見ると、目と目が合って心臓がドキッと音をたてた。

やっぱり私は洋輔さんにしかときめかない。

カウンター席に近づくと、洋輔さんが笑みを浮かべ「いらっしゃい」と言ってくれる。

一昨日の出来事の後から会っていなくて、なんだか恥ずかしい。

「心春、オーダーは?」
「アイスウインナコーヒーで」
「了解」

洋輔さんはコーヒーマシンに向き直り、手際よく作り始める。

私は洋輔さんの背中を見続けるんだ。
何も変わらない。ずっとこのままでいればいい……。

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