初恋はカフェ・ラテ色


高校の同窓会がある土曜日になった。

お父さんとは顔を合わせない日が続いている。お母さんともなんとなく気まずくて、必要な会話しかしていない。

順平さんもファミレス以来、工場にはいるはずだけど顔を見ていない。

家族がバラバラになってしまった感は否めない。

でも、私は洋輔さんと結婚する。

つぐないとまではいかないけれど、今日は夕方まで店の手伝いをしようとお母さんに申し出た。

ちょうど依子さんがお休みなので助かると言われ、暑いけれど大島紬に着替えて階下に降りた。

「あ、お祖母ちゃん。これからお出かけするの?」

階段を降りたところで台に腰を掛けて、靴を履いているお祖母ちゃんにばったり会う。

「ああ。浅草までぶらぶらね」
「飲み物は持った? 暑いから熱中症にならないように気をつけてね」
「水を持ったよ。浅草でぶらぶらした後はカラオケに行くから、お母さんに夕食はいらないと言っておいておくれ」
「うん。言っておく。行ってらっしゃい」

靴をはき終えたお祖母ちゃんは立ち上がると、玄関の取っ手に手をかける。そこで思い出したように振り返る。
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