初恋はカフェ・ラテ色
「熱はたいしたことないんだ」
「お薬は飲んだ? 何か欲しいものはある? お腹は空いている?」

どうして太一に黙っているように言ったの?

喉まで言葉が出かかったのを飲み込む。

「同窓会はどう……ゴホッゴホッ……移らないうちに帰った方がいい」

私の身体を心配して言ってくれているのだろうけれど、すぐに帰れと言われて解せない何かが心の中にうごめく。

とにかく熱を確かめたい。

ベッドのすぐそばで膝立ちすると、手を伸ばして洋輔さんの額に置く。

「心春、帰るんだ」

たいしたことはないと言っても、やはり手に熱が伝わってくる。

「熱、けっこう高いみたい」
「心春!」

洋輔さんは額に置いた私の手を掴むと、小さい子を言い聞かせるような口調で私の名前を呼んだ。

洋輔さん……? なんで?

病気なのに頼ってくれない洋輔さんにショックを受けて、掴まれている手がプルプルと震えてきた。

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