初恋はカフェ・ラテ色
「……お父さんの気持ちもわかるよ。3代続いた店が自分の代で終わるとなると、ご先祖様に申し訳ない気持ちになるんだろう。ゴホッ……ゴホッ……順平さんなら心春と結婚して『柴田屋』を継ぐことが出来て言うことなしだからね……ゴホッ……あぁ……本当に風邪を移してしまいそうだ」
「私は移ってもいいよ」

腕を口元にやる洋輔さん。洋輔さんに気を使わせたくない。

「お父さんには時間をかけて説得しようと思っていたの。でも、お父さんは昔ながらの頑固おやじだから……」
「それでも話してほしかった。俺も半端な気持ちで心春と付き合っているわけじゃないんだから」
「うん……ごめんなさい」

この問題にちゃんと向き合ってくれる洋輔さんに感謝だ。

「心春を愛する気持ちは誰にも負けないつもりだよ」
「ありがとう。洋輔さん。私すごくうれしい」
「風邪が治ったら、ご両親に会うよ。なんとかわかってもらいたい。『柴田屋』を継ぐことは出来ないが」

真剣に私たちのことを考えてくれている洋輔さんに胸が熱くなり、いつの間にか涙が頬を濡らしていた。

「洋輔さんっ」

椅子から立ち上がって、洋輔さんに抱きついた。

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