初恋はカフェ・ラテ色
約束通りの20時に洋輔さんは我が家へやって来た。

急いで玄関に行き、ドアを開ける。

洋輔さんはチャコールグレーのスーツを着て、シンプルな紺のネクタイまでしめていた。

「洋輔さん……」

久しぶりに見るスーツ姿に惚けてしまう。

「大丈夫か? 顔が暗いね」
「これからのことを考えると……きっとお父さん、洋輔さんに酷いことを言う――」
「心春、なにを言われても大丈夫だよ。俺のことはそんなに心配しないでいてほしい」
「でも……」
「洋輔くん、いらっしゃい」

そこへ困ったような表情のお母さんが廊下に現れて、洋輔さんを出迎える。

「こんばんは。遅くにすみません」
「いいのよ。さあ、入って」
「お邪魔します」

お母さんはお父さんのいる居間へ洋輔さんを案内し、私も後ろから付いて行く。
これからのことを考えて私の心臓はバクバクと暴れている。

口から心臓が出てきそうだ。

居間へ入ると、お父さんは入口に背を向けて座っていた。

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