初恋はカフェ・ラテ色
「お父さんっ! 洋輔さんは軟弱な奴なんかじゃないからっ!」

悔しくて反論すると、目の前の麦茶をぐいっと飲む。勢いよく飲んだ途端、気管支の中に麦茶が入ってしまったようで、ゴホゴホと咳き込んでしまう。

「大丈夫かい?」

背中をトントンと優しく洋輔さんに叩かれながら、「あぁ……なんでこんな時にやらかしちゃうんだろう」と反省する。

「心春の慌て者はお前にそっくりだねぇ」

私を見て破顔するお祖母ちゃん。

「俺にそっくりなら言うことを聞けっていうんだ!」
「治夫! お前忘れたわけじゃないだろうね? 心春が高校生を卒業した後、お前たちが洋輔くんに頼んだことを」

お祖母ちゃんの話が見えずに、私はみんなの顔をぐるりと見てから洋輔さんで止まる。

「洋輔さん、なにを頼まれていたの?」

洋輔さんは黙っている。

「治夫たちはねぇ、洋輔くんに熱を上げるお前が心配で、万が一心春を好きになっても、大学を卒業するまでは付き合わないでほしいと、約束させたんだよ」
「えっ……」
「ばあさん!」

そんな約束を洋輔さんはさせられていたの? だからずっと気持ちを隠していたの?

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