初恋はカフェ・ラテ色
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「すっかりご馳走になってしまい、ありがとうございました」

玄関で靴に履き替えた洋輔さんは見送るお母さんに頭を下げる。お父さんは酔いつぶれて30分ほど前から居間で寝ていた。

お酒を飲み始めると、しだいにお父さんの気持ちは和らいできたようで、ぽつりぽつりと洋輔さんに話しかけるようになった。

そのあとは、泣きだしてしまい、しまいには横になって眠ってしまった。

こんなに喜怒哀楽を出したお父さんは見たことがなかった。

ショックを受けながらも、これからは大事にしなければと思った。


「引きとめてしまってごめんなさいね。これからも心春をよろしくお願いします」
「はい。娘さんを大事にします」
「お母さん、駅まで送ってくるね」

洋輔さんはもう一度頭を下げてドアを開けて出た。

「心春、ここでいいよ。もうかなり遅いしね」

24時を回っていた。21時ぐらいから飲み始め、お父さんにたくさんお酒を飲まされたはずだけど、少し顔が赤いだけで普段と変わらない。

門扉へ向かう洋輔さんに小走りで近づくと、手に手を絡める。

「洋輔さん、今日はありがとう。すごく幸せ」
「俺もだよ。両親がアメリカから戻ってきたら挨拶に行こう」
「うん」

右手で頬にかかる髪を優しく払われ、ゆっくり顔が下りてくる。

「んっ……」

今のキスはお酒の香りがして、私の方が酔いそうだった。

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