初恋はカフェ・ラテ色
「さ、降りて」
「う、うん」

ここは屋上?

エレベーターを降りて、ガラスドアを開けて目に飛び込んできたのは夜空に舞う打ち上げ花火だった。

「洋輔さんっ! 花火があんな大きく見えるよ!」

子供のようにはしゃいで洋輔さんの手を引っ張る。

マンションの屋上は住人がいるけれど、さっきのように混雑しているわけじゃない。思い思いにテーブルやシートを敷いてビールを飲んだりおつまみを食べたりして花火を楽しんでいる。

ちょうど段差のある場所に空いているスペースを見つけてそこへ腰かける。

「ここで見られるなら行く必要なかったのに」
「でも心春は一緒に並んで歩き、花火を含めて屋台や雰囲気を楽しみたかったんだろう? それはここでは叶えられないからね」
「洋輔さん……ありがとう」

私の気持ちをちゃんとわかってくれている。
洋輔さんの手をそっと両手で包み込む。

「高校卒業式の日の私に言ってあげたいな。今私は本当に幸せだって」

告白してフラれた夜、明け方まで泣き明かした。あの絶望的な気持ちは今も忘れていない。けれど、あの時は仕方なかったのだ。

洋輔さんに恋人がいたし、私の気持ちもまだ幼かった。

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