初恋はカフェ・ラテ色
3000グラムをちょっと切る小さい赤ちゃんを見て、お父さんは溶けてしまうんじゃないかって言うくらいのデレデレ顔。

「お父さん、抱いてみる?」
「いやー こんな小さいのは何十年ぶりだから怖いなー でも、せっかくだから抱いてみるか」
「お父さん、気をつけてくださいね」

お母さんはハラハラしながら、私から孫を受け取るお父さんに手を添えようとしている。

「男の子か……」

ぎこちなく赤ちゃんを抱くお父さんがしみじみ口にすると、なんとぐずっと鼻をすすり泣いていた。

驚いて私は洋輔さんと顔を見合わせた。

「お父さん、なにを泣いているんですか」
「俺はな、息子が欲しかったんだ」

こんなに喜んでくれるお父さんを見て親孝行が出来たと内心思ったとき――

「心春! どんどん赤ん坊を生むんだぞ。これで『柴田屋』は安泰だ! 俺が手取り足取り教えてやるからな」
「あなた!」
「治夫!」
「お父さんっ!」

やっぱり一筋縄ではいかないお父さんだ。

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