初恋はカフェ・ラテ色
「ごちそうさまでした」
「あかりちゃんに会うなら水羊羹でも持っていく?」
「朝から持っていったら悪くなっちゃうよ」

あかりが水羊羹を好きだと知っているから、持たせようとしてくれたことに罪悪感を覚える。

今日は会うのはあかりじゃなくて洋輔さんだから。

流しの中に食器を置くと洗面所へ行った。
 
洗面所の鏡に映る自分の顔を見て歯磨きの手が止まる。

黒目がちで少したれ目の大きな目に、緩やかにアーチを描く眉。鼻も高すぎず低すぎずで、ここまではまあまあいいんだけれど、唇はぽってりとしているからあまり好きじゃない。

あかりはよく「男がキスしたい唇だよ」って言ってくれるけれど、まだ一度もキスをしたことがないからそんなのは気休めで言ってくれていると思っている。

22歳でなにもかもが未経験。14歳からずっと洋輔さんに片思いしているからだ。

高校でも大学でも好きと言ってくれる人はいたけれど、洋輔さんに片思い中の私は告白されてもまったくときめかなかった。

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