初恋はカフェ・ラテ色
「心春(コハル)、まだぼうっと飯食ってるんか。早くせい」

店からひょっこり出てきたお父さんが朝食を食べている私を急かす。

まだ朝の6時半。私が勤めている私立ひばり幼稚園の出勤時間までまだ1時間ある。

「おやっさん、心春ちゃんの出勤時間までまだ1時間はありますよ」

そう言ってくれたのは、お父さんの後から入ってきた順平さん。

朝5時からの製造が一段落してこれからふたりは朝食を食べる。

今時古めかしいちゃぶ台のような丸い座卓に用意された朝食。ふたりが入ってきたのを見て、お母さんがご飯とお味噌汁を運んでくる。

「そうですよ。心春は毎日忙しいんですから、朝ぐらいゆっくりさせてあげてくださいな」

お母さんも私の味方をするからお父さんは面白くなさそうに口を曲げている。

「仕事が終わったらさっさと帰ってくればいいんだ」

また小言が始まった。

長くならないうちに席を立たなきゃ。

「私にだってお付き合いってものがあるし、幼稚園の用事で忙しいの。さてと、用意しなきゃ」

両手を顔の前で合わせてごちそうさまを言い、食べ終わった食器をキッチンへ運ぶと2階の自分の部屋へ行った。

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