初恋はカフェ・ラテ色

初めての領域

ほんの少し自信をもらって『カフェ・グラン・ロッソ』へ向かった。
土砂降りだった雨は小雨に変わっていた。

小雨になってよかった。

そう思ったのもつかの間、5分後には先ほどの雨の勢いよりさらに激しく大粒の雨が地面を打ち始めた。

傘も役に立たないくらいのすごい雨。まさにゲリラ豪雨。

茶色のパンプスは土砂降りに襲われてから1分もたたずにぐしょぐしょになり、とっておきのワンピースもびっしょりにした。

あまりの酷いありさまにカフェに行く足取りが重くなる。

こんなんじゃお店の中に入れないよ……。
 
駅の構内を抜けたその時――

「心春?」

同じように大きな傘が役にたっていない洋輔さんが目の前に立っていた。

「洋輔……さん……」

唖然となっている間も雨の勢いは変わらない。

「ちょっと買い物に出たんだけど、こんなに降られるとは思わなかったよ。俺たちびしょ濡れだな」
「こんなびしょ濡れじゃお店に入れないから帰ろうと思って――えっ!?」

< 32 / 263 >

この作品をシェア

pagetop