初恋はカフェ・ラテ色
「こんな時間に行っても忙しいんじゃない?」

行ってほしくないようなお母さんの口ぶりに首を横に振る。

「昼間行こうとしたのに、手伝わされたから。いけないっ! 遅くなっちゃう」

行くと約束しているわけじゃないけれど、今日も行きたかった。

2階の自分の部屋へ行き、着物を脱ぎコーラルピンクのクロップドパンツと薄いイエローのギンガムチェックのシャツを着る。

ドレッサーの前で立ったままお化粧をさっと直すと、バッグを手にして下へ降りるとお祖母ちゃんが居間にいた。

「心春、洋輔くんのところへ行くのかい?」
「うん。行ってくるね」
「ああ。気をつけて行ってくるんだよ。洋輔くんによろしくねぇ」

しわのある顔を緩ませ、言ってくれる。
お祖母ちゃんは『グラン・カフェ・ロッソ』へ行くのも好きだし、洋輔さんも気に入っている。

「はーい」

2駅だから自転車で行こう。近道をすれば15分で行ける。

昼間は真夏のように暑かったけれど、夜になると涼しくて気持ちがいい。
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