初恋はカフェ・ラテ色

すり傷の手当

うーん。美味しいー。

そこへ厨房のドアが開き洋輔さんが出てきた。すぐに私に気づき目の前やってくる。もちろんカウンターを挟んでだけど。

「心春、来たんだ」
「うん。お店のお手伝いしていたら遅くなっちゃった」

もう一口生クリームをすくい口元に持っていくと、不意に洋輔さんの手が伸びて私の右手を掴んだ。

「この傷は?」
「さっき自転車で転んじゃったの」

猫のせいだけど、それを言わなかったからいつものごとく、どんくさい子だと思われたかも。

「自転車で来たの?」

責めるような、怒っているような声に返事に戸惑ってしまう。

「……うん」
「こっちに来て」

洋輔さんは言葉少なげに私に命令する。

「でもっ、飲み物が……」
「また作ってあげるから」

カウンターから出てきてケガをしていない方の私の腕を掴むと、従業員の休憩室に連れて行かれた。
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