初恋はカフェ・ラテ色
休憩室は居心地のよさそうな4畳半くらいの部屋で、大きなソファとテーブル。小さな冷蔵庫がある。

洋輔さんは私をソファに座らせると、棚から救急箱を持って隣に腰かける。

無言のまま長い指で消毒をしていくから、私もなにを言えばいいのか困って黙っている。

どうしてそんなに不機嫌そうなの?

「早く消毒しないと治りづらくなるだろう?」

汚れた傷口がきれいになって、ようやく洋輔さんは口を開く。

「夜に自転車に乗るのは感心しないな」
「でも、転んだのは私の運動神経がないんじゃなくて、猫ちゃんが飛び出してきたからで」
「心春の運動神経は問題じゃない。昼間ならともかく、夜は危ない」

危ないって……夜だって昼だって自転車を乗る人はたくさんいるのに……。

でも有無を言わさない雰囲気で、仕方なく濁すような返事をした。

どうしてそんなに怒るのかわけわかんない。

洋輔さんはきれいになった傷口へ軟膏を丁寧に塗っている。

手を伸ばしたくなるくらい触り心地のよさそうな緩くあちこちにはねた髪。私の腕に視線を落としているから羨ましくなる長いまつ毛もよく見える。

じっと見ていたら、心臓が不規則に暴れはじめた。


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