初恋はカフェ・ラテ色

男女は駆け引き

「たっちゃん、今日は自転車なの。だからいいよ」

どうせならたっちゃんより洋輔さんに送られたい。一緒に居たいのに……。

「車に乗せればいいじゃん」
 
たっちゃんは私の気持ちを知っているくせに、ごく簡単にさらっと言う。

「じゃあ、洋輔さん。また来ます! 春、行こうぜ」

突然肩にたっちゃんの腕が回ってびっくりする。

「た、たっちゃんっ!」

強引に連れて行かれる前にお財布から1000円出してカウンターに置いた。

店を出ると、肩に回された手を振り払う。

「たっちゃん! どういうこと? 強引すぎるよ!」

洋輔さんに送ってもらいたかったのに、たっちゃんに邪魔をされて仁王立ちで睨みつける。私はカンカンなのに、たっちゃんはニヤッと笑う。

「だから春はダメなんだよ」

よくわからない言葉を言われて、口がポカンと開いたままになる。

たっちゃんは店の横に駐輪していた私の自転車に近づく。

「春、カギ」

寄こせとばかりに手を差し出され、反射的にポケットから鍵を取り出す。受け取ったたっちゃんはロックを解除し、店の前に停めていたRV車の後部座席に自転車を入れた。

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