初恋はカフェ・ラテ色
「ありがとう。心春ちゃん。いただきます」

勤務時間が早い順平さんは朝食が待ちきれないくらいの勢いで食べ始める。

「女将さん、毎日美味しいご飯が食べられて幸せです」

席に着いたお母さんに、順平さんはいつも感謝する。

「順平もそろそろ嫁がほしいだろう。毎朝、ちゃんとうまい飯を用意してくれる嫁がな」
「そうっすね。そろそろ一人暮らしもわびしくなってきたし、奥さんと子供が欲しいっすね」

まあ28歳なんだから、結婚してもおかしくないよね。でも、順平さんの彼女の話は聞いたことがないな。

「今日は休みをやるから、心春をどこかへ連れて行ってくれねえか?」
「「ええっ!?」」

口をそろえて声を上げたのは私と順平さん。

「お父さんっ! なに言ってるのっ!?」
「おやっさん! 心春ちゃんにも都合ってものが」
「心春の行くところなんぞケフェだけじゃねえか。どうせ暇なんだ。ふたりで出かけてこいや」

お父さんは私たちを出かけさせようと、押し切るつもりらしい。

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