初恋はカフェ・ラテ色
「順平さんは会話下手じゃないですよ。それに私、ぜんぜん可愛くないですし」

和菓子職人として仕事一筋に過ごしてきたから、あまり出かけることがなかったのかもしれない。

きりっとした誠実な人だからモテると思うのだが。

「順平さん、そろそろお腹減りましたよね?」

たっぷり歩いたらお腹が不満を漏らした。

ショルダーバッグからスマホを取り出して時間を確認すると13時を回っていた。

「もうこんな時間だったんだ。食事に行きましょう!」

順平さんも腕時計を見て驚いている。

「すみません。こんなに時間が経っているとは思わなくて」
「動物に夢中になっちゃいましたもんね」

出口に向かって歩き、その途中も動物たちに足を止めてしまう。

結局動物園を出たのは14時を回ってしまっていた。

「なに食べますか?」
「この近くにロティサリーチキンの美味しいところがあるみたいなので、そこへ行きませんか?」
「ロティサリー?」
 
順平さんはロティサリーがなんなのかわからないみたいで、首を傾げる。

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