初恋はカフェ・ラテ色
「ローストチキンです。美味しいと評判なので一度行ってみたいと思っていたんです」
「いいですね。そこへ行きましょう」

スマホでお店の場所を検索してから向かった。
 
人気店とあってランチ時間を外したこの時間でもお店の中は混んでいた。

10分ほど待ってから席へ案内される。
 
「全部美味しそうっすね。ビールが飲みたくなる」
「ビール飲んでください。暑かったからきっとおいしいですよ」
「いや、でも、ひとりじゃ」
「じゃあ私も飲みます」

お酒が飲めないわけじゃなく、ビールも最初の1杯は美味しく感じる。このお店の雰囲気とお料理で飲みたくなったのだ。

「じゃあ、頼みましょう」

お酒好きの順平さんはビールが飲めるとあって、にこにこと嬉しそうに笑う。

評判通りにロティサリーは口の中で溶けてしまいそうなくらい柔らかくて美味しく満足した。

ビールを2杯飲んだ順平さんは飲まない前より少し饒舌になったみたいで、いかに和菓子を作るのが好きなのかを話しはじめた。
 
夢中になって話す順平さんがお父さんのお気に入りなのはよくわかる。

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