初恋はカフェ・ラテ色
「こ、これ、これ……って……」
「ハートを描いてみたくなったんだ」

洋輔さんの言うとおり、カップには今まで実際に見たことがない「ハート」が描かれていた。

この8年間、ハートを描いてと言ってもダメと言われ続けていた。

それなのに、なぜ……?

心臓の鼓動が今にも止まってしまうのではないかと思われるほど不規則に脈打ち、眩暈でも起こしたように目の前がクラクラし始める。

ううん。深い意味はないんだ。ハートを描いてみたくなったって、言ってるし。

落ち着こうとカフェラテには手を出さずに、コップの水を一口飲む。そのコップを持つ手もわかるくらい震えていた。

お水を飲んでいる時に思ったのはカップのハートを写メりたい……だった。

こんなこともう二度とないかもしれない。

「心春、飲まないの?」

私の動揺が気づかないのか、洋輔さんは首を傾けて見ている。

「写メってからっ」

見事な形のハートなのだ。決して歪(イビツ)でない完璧な形。バッグからスマホを出して、震える手で写真を撮る。

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