初恋はカフェ・ラテ色
「だって、洋輔さんの作るコーヒーはとても美味しいので入れたら勿体ないですから」

物怖じしないで洋輔さんの淹れるコーヒーに賛辞を送ってる……。

「ありがとうございます」

洋輔さんの声はさらっと女性の賛辞を受け流しているように聞こえるけど、私の心は複雑だった。
 
ふたりの会話を聞かないように、さっき撮った写メを待ち受けにしようと設定し始める。それが終わるとカップを見た。

ハートだけに勿体なくて飲めないよ……このハートを残したままどうやったら飲める?

「心春? どうした? 飲まないのかい?」

いつの間にか私の目の前に洋輔さんがいて、物思いからハッと目覚める。

「い、いただきます」

ハートを崩さないように下の方をすすってみる。静かに飲んだけれど、ハートは崩れてしまっていた。

「つまらないな。今日は泡が付いていない」
「えっ!?」

ごく静かに飲んだせいで唇に付かなかった。それをつまらないと言われてキョトンとなる。

「……今日の……洋輔さん、なんか変だよ」

微笑む洋輔さんの眼差しがとても優しく感じる。

< 90 / 263 >

この作品をシェア

pagetop