狂愛苦
「もうそろそろ松臣さん上がりですよね? 今日こそ相談に乗ってくれませんか……こんなこと……松臣さんにしか相談できないんです!」
茶髪のボブ、森山胡桃が上目づかいで毎度誘う。
この誘惑にも一度はのってみたいが……やはり俺には妻、美夢(みゆ)の愛らしい表情が頭に浮かび、帰宅を急ぐ。
「ごめん森山さん、今日は早く帰らなきゃいけないんだ。また暇な時に」
鞄に乱暴に書類を詰め込むと、今度は右横の黒髪美女、斎藤久美がすかさず言った。
「若くして出世されてイケメンなのに課長は本当にまじめですよね~奥様が羨ましいです! でもたまには息抜きも必要ですよー? ストレス解消には是非私とお酒でもいかがですかぁ? いつでもお供しますよ! お子さんもまだいらっしゃらないですし、今だけですよ~沢山飲みに行けるのは」
屈託ない笑顔が向けられた。
そう、子供はいない。
すぐにでも欲しいくらいだったが、美夢はそれどころではないようだった。
なんだかいつも疲れた顔をし、美人薄命という言葉がそのままそっくり当てはまるような、それがまたゾクゾクっとした美しさを醸し出していた。
茶髪のボブ、森山胡桃が上目づかいで毎度誘う。
この誘惑にも一度はのってみたいが……やはり俺には妻、美夢(みゆ)の愛らしい表情が頭に浮かび、帰宅を急ぐ。
「ごめん森山さん、今日は早く帰らなきゃいけないんだ。また暇な時に」
鞄に乱暴に書類を詰め込むと、今度は右横の黒髪美女、斎藤久美がすかさず言った。
「若くして出世されてイケメンなのに課長は本当にまじめですよね~奥様が羨ましいです! でもたまには息抜きも必要ですよー? ストレス解消には是非私とお酒でもいかがですかぁ? いつでもお供しますよ! お子さんもまだいらっしゃらないですし、今だけですよ~沢山飲みに行けるのは」
屈託ない笑顔が向けられた。
そう、子供はいない。
すぐにでも欲しいくらいだったが、美夢はそれどころではないようだった。
なんだかいつも疲れた顔をし、美人薄命という言葉がそのままそっくり当てはまるような、それがまたゾクゾクっとした美しさを醸し出していた。