一途な彼は俺様モンスター
バネちゃんの容体は良くなるどころか、だんだん悪化し始めた。

熱は上がり、呼吸も乱れて苦しそうになっていく。




「バネちゃん!しっかり!」


何度もおでこのタオルを変えて、水分補給もした。

これ以上どうしたらいいの…!?

やっぱり病院に行かせるべき!!?


でも、空翔さんには外に出るなって言われたし…


どうしよう…

このままじゃバネちゃんが………



空翔さんに連絡してみようかな。

だけど、今は仕事中だし…



バネちゃんの手を握り泣きそうになっていたとき、ふと自分の手に目が止まった。


頭の中で、ピーンと糸が張る。


私の血を…バネちゃんに・・・・

そうすれば、助かることは目に見えている。


でも…


私は、前に空翔さんと話した会話を思い出していた・・・







……………………



「私の血は…本当に特殊なものだったんですね。ずっと半信半疑だったんですけど、今日で確信しました」


それは夏休みに海に行き、生死をさ迷った男の子を助けたあの日の夜のこと。

なかなか寝付けないでいた私を、空翔さんがずっと付き合ってくれて、ベランダにあるベンチに2人で腰をおろし、空を眺めていた。





「…そうだな。お前は立派だったよ…でも俺は…自ら手首を切ったお前を見てらんなかったけどな」




少し、悲しそうな顔をする空翔さん。



「そうですよね…普通は、あんなとこ人前でやるべきじゃないですよね」

「いや…そういうわけじゃなくて…お前だから見てるのが辛かったんだよ。手首を切るなんて、自殺するみてえだなって思って…そう思ったら、悲しくなった。お前が
、消えるみたいな…」


空翔さん…




「人を救うために、お前が傷をつけなきゃいけないなんて…救ってもらった人にとっちゃ、ありがたい話だけど・・お前を想ってる人にとっては辛いことになるんだよな…うまくいかねえよ」

「…」


空翔さんに、どう返していいのかわからない。

でも、空翔さんの言っていることは理解出来たし、素直に嬉しいと思った。


今思えば、空翔さんは自分の私に対する気持ちを、この時伝えていてくれていたんだ…

だけど、この時の私はそれに気づいていなかった。




「だから約束して欲しいんだけど…絶対にむやみに自分で体に傷をつけてまで、人を救おうとしないで欲しい」

「!」


空翔さんは、真剣な口調で言った。




「お前が人を救おうとしたい気持ちはわかるけど……誰でも構わずっていうのは、やめて欲しい。たとえ、救いたいのが俺たちでも」





空翔さんたち…でも?




「俺は自分が命の危機に立たされても、お前に傷をつくってまで救ってもらいたいなんて思ってねえから 」

「・・・・」


力強く言う空翔さんに、私は何も言えなかった。







…………………



今ここで、バネちゃんに私の血を与えたら…

空翔さんはなんて言うかな…
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