一途な彼は俺様モンスター
怒られる…?

それとも…呆れられる…?


苦しそうに呼吸をするバネちゃんの手を、ぎゅっと握る私。



空翔さんにどう言われて、どう思われようと…

バネちゃんを頬っておけるわけがない…



私は立ち上がり、キッチンからナイフ持ち、目をつぶって自分の手首を切った。

そしてその血を、すぐにバネちゃんに飲ませた。





「バネちゃんっ…大丈夫……もうすぐよくなるから!」


辛そうに私の血を飲むバネちゃんを、私は必死に励まし続ける。





「あさ、み…サマ・・・」

「バネちゃんっ!」


うっすらと目を開けて、口を開くバネちゃん。

血の力が効いてきたみたい…



良かった…

これで一安心だよ…






「やっぱりすごいな、その血の力は…」



ビクッ




後ろから、聞き覚えのある声が突然聞こえてくる…



この声…

振り向かなくても、誰だかすぐわかった…だけど…


私はゆっくりと、まるでスローモーションのように後ろを振り返る。

そこには…





「久しぶりだね、浅海」


!!!!


ニッコリと笑い、全身白い服を着たお兄ちゃんの姿があった。




「どうしてここにいるの!?」


私は立ち上がり、バネちゃんをかばいながらお兄ちゃんから離れる。




「ヴァンパイアの強い結界が、今日はなんだか弱くなっててね…軽々入れたよ」





もしかして…

空翔さんと楓雅さんが留守だし、それにバネちゃんが熱が出て弱っていたせい?

だから、結界が弱まったってこと?




「さあ浅海…お兄ちゃんと来るんだ…」

「い、嫌っ!」


前とは違い、自身に満ち溢れ、堂々としたお兄ちゃんの印象。

それに笑顔や口調までも、前とはまるで違う。


この人はお兄ちゃんなんかじゃない!



お兄ちゃんに手を掴まれ、必死で抵抗する私。




「浅海サマ…を離せっ」

「バネちゃん!」


なんとか起き上がり、お兄ちゃんに攻撃しようとするバネちゃん。しかし…




「邪魔だ」


ドカっ



!!!


「うっ」

「バネちゃんっ!」


お兄ちゃんがバネちゃんを突き飛ばすと、壁にぶつかってバネちゃんは床に倒れ込んだ。

バネちゃんに駆け寄ろうとすると、後ろから紙のような白いものが私の全身を覆った。





「なにこれ!離して!!!」


抵抗しても紙は離れず私を包み込むと、そのまま宙に浮いて、バネちゃんの部屋の窓から外に飛び出した。




「バネちゃんっ!」

「浅海…サマっっっ」


バネちゃんに手を伸ばしても、私はどんどん家から離れていった。

頭だけ出した状態で紙に包まれた私の横に、空を飛ぶお兄ちゃんがいる。





「今すぐバネちゃんの元に帰して!あの子熱があるのっ」

「そんなこと知るか。お前は今日からまた、俺と一緒に暮らすんだ…」
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