一途な彼は俺様モンスター
でも・・
それは叶わないかもしれない…



「浅海ー」




その時、向こうの方から中年のおじさんが浅海を呼んだ。



「あ、お父さん!」


浅海は立ち上がり、そのおじさんの元へ駆け寄った。





「やっぱりここだったか…あんまり村から離れるなよ?まあ、空翔くんと一緒ならいいが…やあ、今日は釣れるかい?」


浅海の親父が、釣をしている俺に近づく。




「こんにちわ。まだ釣れてないです…」

「そうか、なら家でお昼食べないか?浅海も喜ぶし…あれ?楓雅くんは?」

「上で山菜採ってます…今呼んできます」


俺は釣竿をしまい楓雅を呼んできたあと、浅海の住む村へみんなで向かった。





「あ、ヴァンパイアだ」

「モンスターだ…」


村へ下りると、俺と楓雅はこんな感じでいつも見られてる…

もうなれたけど、ちょっとうっとうしかった。




「あらお帰り♪あ、空翔くんと楓雅くんも来たのね!いらっしゃい」

「「こんにちわ」」


浅海の家に行くと、浅海のお母さんが出迎えてくれた。




「もうご飯出来てるのよ。手洗ったら食べなさいね」


浅海のお母さんは、ニコッと笑って家の中へ入って行った。


ふと振り向くと、村の住人が浅海の家に手を合わせて拝んでいた。

俺はその住人から目をそらして、浅海の家に入った。



実は、浅海の住んでいるこの村は…普通の人間の住む村ではなく…特殊な一族の住む村。

それは、この一族の生まれつきの体の体質に関係していた。


この一族の体に流れる血は特別な血で、ケガをした傷口にその血を塗ればその傷は消え…

病気になりその血を飲めば治るという…魔法の血液が流れる一族だった。


その昔は、俺たちのようなモンスターにその血を売り成形を立てていた、浅海たちの一族。

今もそれは変わっていないが、最近はどこからか噂を聞きつけた人間の医者たちが、魔法の血液を求めてこの村を訪れることもあるという。


そんな一族に生まれた浅海…

当然浅海に流れる血液も、特殊な力を持っていた。

でも浅海は、本当に特別な血液を持つ子供だった。




「浅海、いつも言ってるけど…外で遊ぶときは必ず、空翔くんたちと一緒にね?他の子供とは、空翔くんたちと一緒じゃなきゃあんまり遊んじゃダメよ?危ないなら」

「…はーい」


お母さんから言われた言葉に、素直に返事をする浅海。




「寂しいけど仕方無いよ、浅海…お前は100年に一度のわが一族の“神の子”なんだからな」


親父さんが、そう言って浅海の頭を撫でた。

浅海は複雑そうな顔をしていた。




今言ったように、浅海は100年に一度にしか生まれないという…この一族にとって、すごくありがたい子供だった。

浅海の持つ血は、傷や病気を癒すだけじゃなく…死んだ人の命さえも救えるのだ。


まさに“神の子”。
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