一途な彼は俺様モンスター
そのため、浅海は一族にとても大事に育てられていた。


それは仕方のないことなのだが、浅海にとっては複雑な心境だったことだろう…





「空翔くんと楓雅くん。ご飯を食べ終えたら、少し話しがあるんだがいいかね?」




昼飯をごちそうになっている時、浅海の親父からそう言われた。

俺と楓雅は、迷うことなく了承した。


そして、昼飯後…

浅海の親父から、客室のようなところに通された俺と楓雅。

親父はタバコに火をつけ、ゆっくりと口を開いた。




「…君達・・・良かったら、ここに一緒に暮らしてはくれないだろうか?」


親父からの話は、俺たちが想像してないことだった。




「浅海の身の安全を考えると…この村は危険過ぎる。私たちは特殊な血を持っているが、敵から命を守れるほどの力はない。けれど、用心棒を雇うわけにもいかないのだ…一族の素性を、知られてしまうことになるからな」


なるほど。

浅海の親父の言っていることは、ガキの俺にも理解できた。




「偶然に君たちと浅海は知り合い、友達になった。それにいいモンスターだし、浅海も君たちになついている…だからどうだろう?浅海のボディーガードになってはくれないか?ここに住むからには、もちろん食事の面倒はみるし、君たちの修行の時間だってとる。だからどうか…頼む」


俺と楓雅に、深々と頭を下げる親父。

迷うことなく、俺と楓雅は親父の頼みを受けることにした。


親父の気持ちはわかるし、この一族には世話になっているから、断るわけにいかなかった。

それに…浅海のことを大事に想う気持ちは、俺も同じだったからだ。






「それじゃあ一旦家に戻って、荷物をとってきます」

「ああ、わかった。俺も行こうか?」


浅海の家に住むことに決まった俺と楓雅は、自分たちの荷物を取りに、山にある家へ行くことに…



「大丈夫です。そんなに荷物はないですから」

「そうか…では、待ってるぞ」

「はい!」


一旦浅海たちと別れ、俺たちは山へ向かった。


今思えば…

荷物なんか取りに行かなければ良かったんだ…









「空翔~これ持ってく?」


山頂付近にある手作りの家に着き、俺たちは荷造りをしていた。



「最低限のものだけでいいだろ。必要ならここに戻ってくればいいんだから」

「そーだな♪」


少量の荷物だけまとめ、俺たちは少し山で修行をすることに…





「ん?」

「どーした?」


楓雅との修行中…どこからか、煙が上がっていることに気がつく。




「…あれって・・・」

「浅海ちゃんの村辺りじゃない?」

「…!」


嫌な予感が、体中によぎった。
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