一途な彼は俺様モンスター
「ここで待ってろ!俺が必ず助けるから!」

「俺はもうここまでだ…俺のことは構うな……ただ浅海だけは…」

「…!」


おや…じ…




「一族の血を…絶やさないでくれ…」

「……」


親父の言葉に…俺はコクンと頷き…浅海の元へ急いだ。

目からは涙がこぼれていた…






「浅海っ!」


家の中に入ると、外壁に比べて火があまりなく…不思議に思った俺。

それと同時に、モンスターの気配もする…


周りを注意しながら部屋の中に入ると、リビングの中央に倒れている浅海と…その近くに誰かがいるのが見えた。





「それ以上浅海に近づくな!」

「…!」


俺がそう言うと、近くにいたモンスターらしき男がゆっくりとこっちを振り返ろうとする。

それと同時に横から壁が崩れてきて、俺から視界を奪った。


とっさに羽を広げて飛び、浅海の近くに駆け寄った。

振り向くと、もうさっきのモンスターはいなかった…





「浅海!浅海!!」


倒れている浅海を起こし、顔をパンパンと叩くと、微かだが反応はあった。

でも煙を吸い込んでしまったのか、危険な状態ではあるように見えた…



浅海の血の力が、この炎を遠ざけているのか…?

だから浅海がいる家の中は、火が少ないってことか?


頭の片隅でそんなことを考えながら、浅海を抱え翼を大きく広げた。



翼、背中…

腕、足が痛い・・・


でも、そんなことはいい。




俺は着ていた服を脱いで、浅海を覆うようにかぶせた。

そして大きく息を吸い、力強く翼を動かした。







ドッカーーーーーンっっっつつつ




そして真上に向かって飛び、屋根を突っ切って外に飛び出した。





「う…」


体中に痛みが走る。

でも、俺の中には浅海の身を守ることしか考えられなかった…




とにかく火のないところに向かった…


とりあえず助かるには、それしかないからだ…





バサッ

バサバサッ…パサ…



翼を動かすにつれ、だんだんと違和感を覚える。

感覚がない…そんな感じだ……





ドサッ




「うっ…………ハァハァ…」


火事を抜けてやっとたどり着いた場所は、村から一番近い川沿いだった。

川べりに倒れ込むように着地すると、抱えていた浅海が地面に落ちた。




「あ、さ………み」


浅海をまた抱えようと体を動かしても、思うように動かない。



早く浅海を病院に行かせねえと…


浅海だけは…助けたい!




俺は浅海の親父のことを思い出していた。


その時…




「空翔っ!!!!」



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