一途な彼は俺様モンスター
…!


俺を探していた様子の楓雅が、俺をみつけてどこからか飛んでくる。




「お前っ…ひどいケガじゃねえか!浅海ちゃんは…?」

「多分大丈夫…でも、早く病院に……」

「お前の方が重症じゃねえかよっ!」

「………うっ」


すると、近くで足音が聞こえて来た。




「誰かいるのかー?」




すぐそこに、救急隊員と思われる人達がいる。




「やばい!人間だ!こんなとこ見られたら厄介だよ!!」


楓雅はそう言って、慌てて俺を抱えた。




「ふ、楓雅!」

「浅海ちゃんなら大丈夫だよ!」

「…」


体中の痛みに耐え、楓雅に抱えられながら振り向き…川べりに横たわる浅海を見た。

気を失っている浅海を、救急隊員の人が発見した…

それを見てすぐ、俺は意識を失った。














カタ

カタカタ…



「…………ん」

「空翔!」


目が覚めると…そこは山奥で楓雅と住んでいた家の中…

俺は体中包帯だらけで、鼻につく薬のような匂いが周りに舞ってるのうな気がした。




「大丈夫か!?お前、二日も眠ったままだったんだぞ!?」

「楓雅…」


心配そうに、寝ている俺の顔を覗き込む楓雅。

目には、少し涙がたまっている。





「…起きたか坊主」


っ!


するとすぐ横に、見覚えのない爺さんが壁に寄りかかっていた。





「誰だお前っ…」


起き上がろうとしても、体が動かない。




「バカ、動くなよ!しばらく絶対安静だ。それに、この人がお前の命を救ってくれたんだぞ!」

「え?」


この爺さんが…?



その爺さんは、紺色の浴衣のようなものを着て、見た目は人間のようだが…モンスターのオーラを出していた。





「威勢のいい坊主だな。これだけのケガをしたのも納得だ」

「…」


そう言って爺さんは、俺に近づいてきた。





「あばら、右腕の骨折。左足のひび。肺に煙を吸い込んどった…それと…」







「翼がえらく傷ついておる。炎に突っ込んでいったそうだな?両方の翼にかなりの火傷と、骨には複数のひびじゃ…あと一歩で、もう飛べなくなるところじゃった…」

「…」


爺さんはそばにあった、水の入った桶でタオルを濡らしてしぼり、俺のひたいに置いた。





「爺さん…医者か?見たところ人間じゃねえだろ?」

「そうじゃ。わしはモンスター専門の医者だ。旅をしながら、困ってるモンスターを助けてる…お前のようにな」

「…」

「この山のふもとの川で休憩しとったら、ボロボロになったお前を抱えた楓雅と、偶然に会ってな…わしがお前を手当てしてやったというわけじゃ。楓雅とわしとが居合わせた偶然に、感謝すんだな」
< 142 / 202 >

この作品をシェア

pagetop