一途な彼は俺様モンスター
爺さんはそう言って、肩をコキコキと鳴らし、スッと立ち上がった。




「坊主…お前名前は?」


俺を見下ろす爺さん。




「空翔」

「……そうか。お前の名前のように、自分の翼を大事にしろ」

「…どういう意味?」


爺さんはそう言って俺から目をそらし、ゆっくりと玄関のドアに向かって歩きながら言った。




「次に翼を傷つけるような事があったら…お前はもう飛べなくなる…」

「…!」


その言葉に、背中の辺りがズキッと傷んだ。





「ヴァンパイアは飛べなくなると、力をほとんど失う…そう、親に教わらなかったか?」

「…俺たち親はいないんだ。産まれてすぐ、戦いで死んだから…」


楓雅がそう言うと、ドアノブに手を伸ばした爺さんは一瞬止まる。

そして、俺たちを真っ直ぐ見つめた。





「しばらく俺はここに居座る…構わんな?」




居座るって…




「爺ちゃん…俺たち一緒に住むのか!?」


楓雅も驚いている。




「ああ。いくらヴァンパイアだっていっても、お前たちはまだ小僧じゃ。2人きりでこの山に暮らすのは、ちと危険過ぎる…」


爺さんはクルッと振り返り、俺たちの方を見た。




「空翔はしばらく動けんと思うから、わしがつきっきりで看病しよう…そしてケガが治ったら、お前らの武道をみてやる」

「…爺さん、武道なんか出来んのかよ?」


どう見ても、よぼよぼの爺さんにしか見えねえけど…





「マサシ…そう呼びな」



パタン…





爺さんは俺たちから目をそらして、家から出て行った。






「マサシ?大丈夫かよ、あの爺さん」

「そんなこと言うなよ。お前の命を救ってくれたんだから…」


楓雅は少し怒っていた。





「…悪かったよ、無理なことして」

「本当にな。俺はマジでお前が死んだと思ったよ…マサシと会わなかったらどーなってたことか…ったく、本当浅海ちゃんのことになると…」
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