一途な彼は俺様モンスター





「浅海は!?」


俺は寝ている体をガバッと起こし、楓雅に詰め寄った。




「バカ!寝てろよっ」

「浅海はどこだっつってんだよっ」

「大丈夫!山を降りたとこの病院にいるよ!命に別状はない。生きてるよ」

「…良かった」


俺は一瞬で力が抜け、布団に倒れ込んだ。




「昨日そっと病院に忍び込んだら、ちゃんと入院してた…まだ入院が必要みたいだけど、大丈夫だよ」

「そっか…」

「でも…浅海ちゃんの一族は…」

「・・・・・」


楓雅の顔が曇る。





「あの火事を起こした犯人…人間じゃねえよ」

「そーなのか?」

「ああ。浅海を助けるとき…その近くで、モンスターの気配がした…多分そいつが犯人だ」

「狙いは浅海ちゃん?」

「…だろうな」


それしか考えられない。





「動けるようになって…浅海を迎えに行く…」

「ああ…でも空翔・・・もう絶対に無茶はしないでくれよ?俺は…この世で誰よりもお前のことを大切に…」

「気持ち悪りぃこと言ってんじゃねえよ…」

「俺は真面目に言ってんだ!倒れたお前を抱えて…森をさ迷った時・・・本当にもう一人ぼっちになっちまったと思った…目を開けないお前を見て…俺は・・・」


目をうるませながら、楓雅は俺が気を失ってからのことを話始めた。











…………………



俺を抱えながら、楓雅は今まで生きてきた中で一番翼を動かして飛んだそうだ。

翼がちぎれるかと思うくらいに…

でもそんなことよりも、動かずに目を開けない俺を…どうしたら助けられるのか、そればかり考えていた。





「ハァハァ…ハァ…」


森をさ迷い進むにつれ、体力ばかり奪われた。

立ち止まったら俺は助からない…


でも、どうしたらいいんだ。

俺たち以外…この山と森には知り合いはいない。







ドサッ



木の枝に翼が引っかかり、バランスを崩して転倒。

抱えていた俺は川沿いの砂利に落ちた。





「空翔!」


楓雅は落ちた俺に駆け寄り、もう一度俺を抱えようとする。

だけど、力が入らない。



今まで、朝から晩まで修行してきて…あれはなんの意味があったんだ…

仲間1人助けられないで、なにが修行だよ。


強くならなきゃ…

仲間すら、助けられない…




悔しくて、涙がこぼれた。









「むやみに動かすな。その坊主は骨折しておる」




その時、後ろから老人の声が聞こえていた。

人間だと思った楓雅は、とっさに俺の盾になる。





「安心しろ。わしもお前と同じモンスターじゃ…」

「…!」
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