一途な彼は俺様モンスター
「お前はいつも無茶をするこの坊主に、毎回振り回されておる…時には、本気で腹が立つだろう…でも…」

「…」

「お前にとって、この坊主は大切な存在なんだよな」

「!」


楓雅は顔を上げた。





「安心せえ。この坊主は死んではいない…わしが必ず助ける」

「う、ん…」


優しく笑う爺さんに、楓雅は心を許した。




「じゃあ、水と薬草をつんでくるよ!お爺さん…」

「マサシ…そう呼びな」








………………




「…空翔?」




ぼーっと昔のことを思い出していると、横から楓雅が俺の顔を覗きこんでいる。




「なにボケっとしてんだよ。会議終わったぞ」

「え…」


気がつくと、会議室には俺と楓雅しかいなかった。

俺は書類をまとめ、体をぐーんと伸ばした。




「…考え事か?」

「まあな。ちょっと昔のこと思い出してさ」

「昔のこと?」

「ああ…もうすぐあの命日だし」

「!」


俺がそう言うと、楓雅は表情を変える。





「…そうか。浅海ちゃんの一族の…」

「ああ。火事で浅海以外の一族が滅んだあの日だよ…」

「もう随分経つよな…あの日は一生忘れられない日だよ。火事は起こるし、おまえは無茶するし」

「お前まだ値に持ってんのかよ」


結構長くねえか?





「俺は一生言い続けるからな!マサシがいなかったら、お前はここに…」

「はいはい、わかったよ」

「本当にわかってんのかよっ」


この話になると、楓雅はいつも怒り始める。





「お前はいっつも無茶し過ぎなんだよ!特に浅海ちゃんのことになると!」


このフレーズも、何回聞いたかわかんない。




「まあ、お前の気持ちもわかんなくはねえけどな。俺だって…真由子と出会ってから、お前が無茶しちまう気持ちもわかるよ」

「…なんだよ、のろけ?」

「…そりゃあ、あの火事で助かった浅海ちゃんが入院中に消えたら…お前も目の前が見えなくなっちまうよな」

「…」


楓雅は俺の隣のイスにだらしなく座り、天井を見上げて言った。





そう。

あの時、自分のケガが少し良くなってから…俺は浅海を迎えに行ったんだ。


だけど、入院先の病院に浅海の姿はなかった…
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