一途な彼は俺様モンスター
突然体が何かに包まれ、宙に浮いた。

てっきりお父さんが助けてくれたのかと思ったけど、うっすらと目を開けて見えたのは、助けてくれたのはさっきの男の子だった。

驚いて目を見開くと、男の子は黒い翼を背中から広げて、私を抱えながら宙に浮いている。


その時、この男の子は人間じゃないんだ…と思った。






「浅海大丈夫か!?」


男の子が私を川辺まで連れて行ってくれて、私はお父さんの側へ…

服は濡れてしまったけど、どこもケガはしなかった。





「…坊主…ありがとう……君はもしかして…」


自分の着ている上着を脱ぎ、私に着せてくれるお父さんが、男の子の背中の翼を見て言った。




「ヴァンパイアだよ」

「やっぱり…」


男の子は大きくて真っ黒な翼を広げて、私とお父さんを見せた。

当時の私にはヴァンパイアというのはなんなのか分からなかったが、ここでこの子がやっぱり人間じゃなかったという確信がもてた。




「噂では聞いていたが…まだ日本にもヴァンパイアがいたのか…君は1人か?」

「ううん…もう一人のヴァンパイアと、山で2人で暮らしてる」

「子供2人で!?お父さんやお母さんは?」

「…戦いで死んだ」


男の子は少し悲しい顔をした。






「そうか…すまない」

「じゃあ…行く」

「あ!待ってくれ」


男の子は翼をたたんでスッと消し、私たちに背を向けた。

お父さんはとっさに男の子を引き止める。





「もし君さえ良かったら、この子と友達になってくれないか?」

「え?」


お父さんがそう言うと、男の子は驚いたように振り返る。




「この子は生まれつき特殊な血を持つ子で、普通の子供のような生活は危なくてさせてやれていない。でも君たちヴァンパイア一族は、昔から強いモンスターだと聞いている。君たちになら、浅海を任せられる。どうだろう?君たちが浅海と仲良くしてくれるなら、食事や生活の面倒をみるよ」


私の頭をポンと叩くお父さん。


男の子はお父さんの言葉を聞いて、考えている様子だった。けれどすぐ…






「…いいよ」



男の子は軽い口調で言った。






「そうか、ありがとう!感謝するよ!浅海良かったな!あの子が一緒なら、友達と外で遊んでもいいぞ」

「ほんと!?」
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