一途な彼は俺様モンスター
私にとって友達と外で遊べるというだけで、飛び上がるくらい嬉しいことだった。




「浅海が濡れてしまってるし、今から家に戻るけど…どうだい?お昼をうちで一緒に食べないか?もう一人の君の仲間も一緒に……あ、そういえば君の名は?」

「…黒井…空翔」



くろい…

つばさ…






そう、これが出会い。


私はここで、空翔と出会った・・・









「つーちゃん!」


その日から、私は毎日のように空翔に会いに行った。

空翔の仲間である楓雅ともすぐに打ち解け、3人で仲が良かった。




「つーちゃんて呼ぶな」

「いいじゃん!」

「良くねえよ。つーかお前邪魔。家に帰れよ」


大きな岩を持ち上げてトレーニングをする空翔が、私をシッシッと追い払うように言う。




「きついな、空翔は…いいじゃん…別に邪魔してるわけじゃないんだし」


腕立て伏せをする楓雅が空翔に「もう」と眉をしかめ、私は空翔「べー」と舌を出した。

空翔はいつも私を邪魔者扱いして冷たくあしらって、それをいつも楓雅が優しくフォローするのがお決まり。


私は空翔に何を言われようと、その場から離れたりしなかったし、どんなに冷たい口調でも本気で傷ついたことはなかった…



空翔はいつも冷たくても、いざとなったら優しいことを知ってたから…






「空翔~…そろそろ休憩しようぜ。浅海ちゃんが持ってきてくれた弁当食おー」


バテた様子の楓雅が、へなへなと岩場に倒れ込んだ。





「そうだよ、空翔~私がここにきたのは2人に会いに来たのもあるけど、お昼のお弁当を持ってきたんだからね」


私は重箱の入った紙袋を、空翔に見せた。

空翔は持っていた岩を川にドボンっと投げ、めんどくさそうに川まで行って顔をバシャバシャと洗った。







「腹減った~早く食おうぜ」

「向こう行こう!ここは砂利だから…空翔ー!行くよー!」


川にいる空翔を呼ぶと、空翔は翼を広げてこっちに飛んでくる。





「貸せ」


そして私の持っている荷物を持ってくれて、スタスタと先に行ってしまった。
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