一途な彼は俺様モンスター
「そうなんだ…初めて知ったよ…」


ヴァンパイアのことを、知ってるようで全然知らなかった…

この空の渦を見ると、紙神なんかに負ける気なんて全くしない。





ビリビリビリッ


空翔の手に黒い稲妻が走り、遠くから見てもとてつもない力を放っているのがわかる。空翔はその手を大きく振るい、紙神目掛けて思いっきり走り出した。



空翔…一発で決めるつもりだ……

それくらい大き過ぎる力…






バキッッッ



ドゴーーーーーンッッッ!!!!!!!






稲妻が走った空翔の手が、紙神の胸に刺さった。

無意識のうちに私は「よし!」と声を出していたが、すぐに違和感を感じた。





「今…紙神は、空翔の攻撃を一切よけなかった」


よけるどころか、わざと受けたような気もしたけど…気のせいかな?





「フフフ…」

「!?」


胸に空翔の手が刺さった状態で、紙神は嬉しそうに笑う。空翔はそれを見て、眉をしかめていた。



なにがおかしいの…?






ペラ…




ぺらぺらぺらぺら………






「なっ…」


そのとき紙神の目が光り、ひゅうと風が吹くと…空翔を紙切れが一斉に覆った。

まるで自分の胸に刺さった空翔の手を、紙神がわざとつかんで離さないようにしているみたいにも見える…





「いっ………………」


紙に覆われる空翔の痛々しい声が聞こえ、胸が苦しくなった…




どうして…?

どうして空翔の攻撃が効かないの…?






ペラペラペラペラ…


ペラペラペラペラペラペラ…




空翔を覆っていた紙が剥がれると、空翔の体は傷だらけになっていて、所々血が出ていた。

紙神の胸から手を引き抜くと、空翔はその場から離れて地面に足をつく。






「ヴァンパイアが足をつくとは情けない…実にいい光景だな」


クスクスと笑う紙神の胸には、確かに空翔が手であけた穴が空いているが、紙神は痛がるような表情や仕草は一切見せていない。
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